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びっくん

大手酒販売チェーンの創立160周年を記念して制作した広告用イラストレーション。
コピーは近藤氏、イラストは西氏。社員公募のゆるキャラ?をリデザインした。

びっくん

アイコは日頃からいろいろな事件に遭遇することが多い。友人たちからはそれを面白がられている。鉄工関係の専門商社に勤務し、総務部に所属している。日々書類との闘いが繰り広げられる。正義感の強いアイコは、同僚や後輩からは「世直し役」のように思われている。特に隣の部署の部長Aとは馬が合わないことで社内でも有名。上司にこびへつらい、かといって部下を守ることもできないタイプの部長Aは常に弱腰で、典型的な日本の中間管理職。その部長Aと伝票の処理という些細なことで言い合いになり、部署を超えての大げんかとなる。さすがに「隣の部署の仕事えの口出しは越権行為だ」と自分の上司から怒られて、納得もできずに落ち込んでしまった。
 その日はどうしてもモヤモヤを発散させたい。駅に車を停めてあるのでお酒を飲んで帰れないアイコは、車で帰宅途中にある酒やビックに立ち寄り、自分のためにお酒を買って帰ることにした。店に入ると、いつもは気にも留めないはずの日本酒コーナーがなぜか気になって仕方がない。さほど仲良いとは言えない父が日本酒好きなので、なんとなく敬遠していたということもあり、アイコは普段ワインばかり飲んでいるからだ。まるで引き寄せられるようにして日本酒コーナーに行く。
 そこには数多くの日本酒が並んでいたが、アイコの眼にとまったのは、かわいいパッケージのミニボトル。このサイズなら飲みきりできると思って購入する。
 帰宅すると、家族はすでに夕食を済ませた後。アイコも母が作った夕食を一人で食べているが、会社でのことを思い出すと悔しくて涙が出て来る。食事は早々に済ませて、購入した日本酒を持って庭に出る。その日は偶然にも満月だった。きれいな月を見ながら、いろんなことを思うアイコ。グラスに日本酒をつぎ、ひとくち含んでみると、それは馥郁とした豊かな味わいの日本酒だった。「ん?美味しい」とひと言。月の光にボトルをかざしてよく見ると、純米酒と書かれている。「今までは吟醸酒が女性向きで軽やかで美味しいと思っていたけど、純米酒ってこんなに豊かな味わいなので」
 一人でつぶやきながら、眼をつぶり、日本酒の味わいをゆっくり噛み締める。それをしばらく繰り返していた。気づいたら30分以上たっていた。アイコにとって日本酒をそれほどまでにじっくり味わって飲んだのははじめてのことだったのだ。しかも会社で起きた出来事のことをすっかり忘れて、知らぬ間に一人で微笑んでいる。なんとも不思議で幸せな気分になっているアイコだった。
 すると足元に一匹の大きな亀が寄って来た。ビックリしつつもなぜか怖がることのないアイコ。なぜなら亀の目が大きく、その瞳に満月が映りこんでいて、思わず見入ってしまったから。
不思議な空気感の中、亀はアイコに話し始めた。自分はスコットランドの地からやってきたのだと・・・・・。

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