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振子の時計

JRの某駅舎がリニューアルした。
古い事務所で働いていた八角時計が廃棄されるところを救うことができたのは、
制服や家具など歴史を語る品々が既に燃された後のことだった。
もちろんもう何年も動いていないだろう。
文字盤は反り返り、蝶番はひん曲がってグラグラ、埃で真っ黒だ。
解体すると、人間味ある手作りの部品、幾度と磨かれ擦り減った金の装飾、
文字盤裏の大正15年の鉛筆書きが現れ、手を止めノスタルジックに浸る。
叩いて成形し直したり、磨いたり、劣化した部品は自作したり…
そしていよいよゼンマイを巻くと、バオーンと鐘を鳴らし永い眠りから目覚めた。
が、その鼓動はカチカチとかチクタクなんてナマ優しいもんじゃない。
STRONGの名のごとく、ドックッドックッと部屋中に響き渡り、家中に勇ましい時報を轟かせる。
かといってこの手で再び眠らせることもできず、
睡眠不足の日々が続いている。

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